紹興は中国の浙江省北部に位置する都市で西は浙江省の省都杭州に接し、近隣の上海からは高速鉄道(新幹線)で約1時間20分です。
紹興の位置する揚子江下流域は江南地方と呼ばれ、上海、蘇州、杭州など著名な観光都市を有し、中国でも有数の観光エリアとなっています。
ところが、その中でも紹興は海外からのツアースポットから外れていることが多く、実際に行ってみると外国人観光客の姿を見かけることは少ないようです。
しかし、悠久の歴史や多彩な観光スポット、そして何よりも紹興という街自体が持つ魅力は、蘇州や杭州に決してひけを取りません。
今回は、そうした知られざる古都紹興の魅力を紹介します。
1.紹興の歴史
紹興は2500年の歴史を持つ悠久の古都です。
古くは中国の春秋戦国時代、越国の都として栄えました。
越の時代には「会稽」と呼ばれ、この名称は市内にある「会稽山」という山に残されています。
長い歴史の中ではこの春秋戦国時代が最も有名です。
当時の越国は有名な王勾践によって統治され、勾践は隣の呉国の王夫差との争いを繰り返しました。
故事成語の「臥薪嘗胆」や「呉越同舟」はこの時代の物語が原典となっています。
その後の隋の時代、紹興に呉州総管府という役所が置かれ、紹興一帯は「越州」と名づけられました。
南宋時代には、越州を紹興と改名し、現在までこの名が用いられています。
解放後の新中国(中華人民共和国)には、新たに紹興市としてその下に1市4県が置かれ、現在に至っています(中国行政区画では県は市より小さく市の下に置かれます)。
2.紹興酒の故郷
紹興で最も有名な特産品は紹興酒です。
市内には紹興酒を出す飲食店が軒を連ねています。
日本では紹興酒という名前で通っていますが、中国では、紹興の南東にある鑑湖の水(鑑湖水)を使って製造された酒だけが紹興酒と名乗れます。
紹興酒の原料はモチ米ですが、同じモチ米を使った酒は他の地方にも有ります。
中国では、モチ米を使った醸造酒を一般に「黄酒」と呼んでいて、紹興酒は黄酒の一種です。
ちなみに、日本では紹興酒にザラメを入れるのが一般的ですが、本場の紹興では邪道な飲み方です。
日本で売られているものは台湾製が多く、熟成させずに日本に輸出されるので甘味が全くありません。
そのため砂糖を入れるのです。
本場の紹興酒は何年も寝かせて熟成させて酒自体が甘味を持っているので、何も入れる必要がないのです。
地元の銘柄では「古越龍山」、「女児紅」、「会稽山」などが有名です。
その内、古越龍山は生産量が最も多く、最近は海外にも輸出されて、日本でも飲める機会が増えました(成城石井でも扱っています)。
紹興酒の熟成期間は3年、5年、8年、12年とありますが、古いものが価格も高いです。
しかし、地元の人によると5年ものがいちばん良いそうです。
3年ではもの足りず、逆に5年以上はあまり変わらないそうです。
3.紹興の主な観光スポット
蘭亭
南北朝時代の書聖と言われる王義之が名作「蘭亭序」を書いた場所として有名です。
王義之は当時紹興に住み、名勝蘭亭に親族や知人を招き宴を開きました。
その時に書かれたのが蘭亭序です。現在は当時の面影を残した庭園として修復され、王義之に関する文物も展示されています。
魯迅故里
近代の文豪 魯迅は紹興出身ですが、彼が育った生家が魯迅記念館として残され、関連する文物が展示されています。
近くには少年時代の魯迅が通った「三味書屋」や、魯迅の小説に出てくる酒屋も有ります。
大禹陵
中国古代の伝説の帝王といわれる禹の陵墓です。
禹は舜から帝王の位を譲られ、伝説の夏王朝を開いた人物です。
秋瑾故居
近代の女性革命家として有名な秋瑾の故居です。
彼女も紹興出身で、清朝末期に紹興を中心として革命を行っていました。
日本に留学した経験も有ります。
最後には清朝の役人に捕まり処刑されました。
その他故居
紹興は魯迅や秋瑾の他にも、蔡元培(民国の教育家)、馬など近代の著名人を輩出した土地柄です。
また、周恩来の原籍地でもあり、周恩来故居も有ります。
紹興のもう一つの魅力はその街並みです。街中には細いクリークが東西南北に流れ、漆喰を使った白壁の家並みは、日本人がイメージする江南の古い風景そのものです。
すなわち、紹興を訪れるいちばんの楽しみは、市内の散策だと言えるでしょう。
江南の古い町並みを残している観光スポットとしては、上海近郊の周荘などが近年有名になりました。
しかし、紹興は古い町並み意外に、他の場所には無い紹興酒と言う素晴らしい特産品が有ります。
昼間から酒屋で美味しい紹興酒を一杯やり、ほろ酔い加減で古い町並みを散策するのは、何とも言えない趣が有ります。
他の地域では味わえない楽しみです。
上海からも列車で1時間半足らず、交通の便も非常に良いので、上海旅行の合間にぜひ紹興への観光をお勧めします。
上海からでも十分日帰りが可能ですが、できれば1泊して、美味しいお酒と古い街並みを堪能するのが良いでしょう。