言語とは面白いもので、それぞれの言語の間で、全く違う表記の仕方にも関わらず音が似ていたり、はたまた全く同じ表記方法なのに読み方が違ったりする言葉があるものです。
また文化交流の過程で他国の言葉を真似て発音されるようになった単語や、全く同じ意味を持つものとして完全に受け入れられている単語も多く見られます。
外国語を学んでいるとその過程で、そのような類似点や相違点に気づきます。
単語の発音が、日本語のそれとよく似ていたり、会話の中で全く同じような使い方をしたり…。
中国のように日本と文化交流の長い歴史がある隣国同士であればあるほど、日本語由来の単語もたくさんあるはずですね。
今回は中国語の中に見られる日本語から来た言葉、特に現代のものを取り上げてみたいと思います。どれも日常的に使われている言葉ばかりです。
意外と多い「政府」に関する日本発祥の中国語
調べて見て興味深いのは、政府や国家組織に関する分野で日本語由来の単語が多く見られることです。
例えば、以下のような単語です。
政党 zhèng dǎng 政党
政策 zhèng cè 政策
主义 zhǔ yì 主義
方针 fāng zhēn 方針
民族 mín zú 民族
法律 fǎ lǜ 法律
社会 shè huì 社会
权利 quán lì 権利
実はこんな言葉も日本語から来ています。
警察 jǐng chá 警察
派出所 pai chū suǒ 派出所
ふと思い出しましたが、以前、日本に暮らして40年ほどになる中国人の60代のおばさまに、パトカーって中国語ではなんと言うの?と聞いた時、「私が中国にいた頃はそんなものはなかったから、わからない」と言われました。
つまり、「警察」や「派出所」という言葉が庶民の間で日常的に使われるようになってから、「パトカー」や「おまわりさん」という言葉が派生してできたということになりますね。
ちなみに「パトカー」「おまわりさん」は、こう言います。
警车 jǐng chē パトカー
警察先生 jǐng chá xiān sheng おまわりさん
「生活」「教育」に関係する日本発祥の中国語
毎日なんの違和感もなく使っている単語が、近代の日本から来た言葉だとは、中国語を母語とするネイティブたちも知らないかもしれません。
中国語初級者もよく知る、頻繁に使われる単語も、実は日本語由来のものが多くあるようです。
文明 wén míng 文明
文化 wén huà 文化
艺术 yì shù 芸術
能力 néng lì 能力
普通 pǔ tōng 普通
概念 gài niàn 概念
动产 dòng chǎn 動産
不动产 bú dòng chǎn 不動産
出版 chū bǎn 出版
协定 xié dìng 協定
广告 guǎng gào 広告
番号 fān hào 番号
运动场 yùn dòng cháng 運動場
目的 mù dì 目的
便当 biàn dāng 弁当
「科学 kē xué 科学」に関する言葉も、新たな研究や発展に伴って加えられているようです。
动力 dòng lì 動力
空间 kōng jiān 空間
进化 jìn huà 進化
高压 gāo yā 高圧
低压 dī yā 低圧
暖流 nuǎn liú 暖流
寒流 hán liú 寒流
神经 shén jīng 神経
温室 wēn shì 温室
「幸福 xìng fú 幸福」「时间 shí jiān 時間」も後に日本語から取り入れられた単語のようです。
とても意外な気がしませんか?
新たに取り入れられた文化や習慣に関する言葉以外でも、このように日本語由来のものがあるんですね。
こうなると、つい、「幸福」や「時間」という言葉が定着する前は何と表現していたんだろう…と不思議になってしまいます。
最近の「流行」から加えられた言葉
日本語でも毎年新たな言葉が辞書に加えられていると言います。
中国語にも、流行に合わせて新たな言葉がどんどん加えられています。
日本の「アニメ」や「アイドル」が流行すれば、それに関して日本語で使われている言葉をなんとか中国語表記に変換して新語を作る…そんな流れができているようです。
动漫 dòng màn アニメ
漫画 màn huà マンガ
交响乐 jiāo xiāng yuè 交響楽(これはアニメの内容から流行った言葉です…)
达人 dá rén 達人 (例えば、太鼓达人は「太鼓の達人」です。中国のゲームセンターでも人気があります)
宅男 zhái nán 宅女 zhái nǚ(元は、「オタク」という意味で流行りましたが、最近ではどうも意味が違って来ているようです。どちらかといえば、「ひきこもり」に近いかもしれません)
萌萌达 méng méng dá 萌え~
现充 xiàn chōng リア充
草食男 cǎo shí nán 草食男子
肉食女 ròu shí nǚ 肉食女子
現代中国語の8割は日本語!?
ある人の意見では、「現代中国語の8割は日本語由来の言葉である」そうです。
実際問題、さすがにそれほどまでではないにしても、上述の通り、中国語と日本語間で、かなりの単語を共有していることがわかります。
ここで取り上げたものはほんの一部ですが、ぜひ、会話の小ネタとして使ってみてください。
※あ、逆に、中国語っぽい日本語というのもあります。
詳しくは、この記事に書きました!