中国語の方言の数や違いと、訛りを聞き分けるコツ

中国語は、世界最大の人口を有する中国の公用語です。中国の人口は日本の約13倍ですが、国土面積は約25倍にも達します。国土の広大な中国では、当然ながら地域の差も非常に大きく、それが最も反映されるのが言葉です。

「中国語」と呼ばれる言葉は、一般的には北京語をベースとした標準語を指し、その他に各地域に独特な「方言」が存在します。中国語の方言は、例えば広東語と北京語を比べた場合でも、その差はきわめて大きく、もはや別な国の言葉と言ってもよいほどです。

したがって、中国語にはさまざまな方言が存在し、地域間での話し言葉によるコミュニケーションを困難にしてきました。そこで、解放後の新中国では、標準語の普及を重要な政策として推し進めてきたのです。

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標準語は一般に、

 

pǔ tōng huà
普 通 话

 

と呼ばれます。「普(あまね)く通じる言葉」という意味です。“普通话”は、首都である北京の言葉をベースにしています。中国語における完全な標準語とは、中央テレビのアナウンサーが話す言葉で、日本で言えばNHKですね。

中国の標準語の発音は、

 

pīn yīn zì mǔ
拼 音 字 母

 

という発音記号を使って表します。

 

これは、アルファベットを利用し、子音と母音を組み合わせ、さらに声調記号を加えています。標準語の場合は4つの声調(四声)が有ります。“拼音字母”は解放後の中国で制定された新しい発音のためのシステムで、中国の小学校での国語の授業や、外国人が中国語を学ぶ場合もこの記号が使われます(ちなみに、ワープロで中国語を入力する場合も“拼音字母”が使われます)。

 

1.中国語の中の方言

中国語は方言の差が非常に大きい言葉ですが、大きく分けると、下記の7つの系統(七大方言)に分類されます。

 

北方語(北京、河北省、河南省、東北、山東省、山西省、陝西省、内蒙古、甘粛省、青海省、貴
    州省、四川省、雲南省、安徽省、湖北省、江蘇省)

呉語(上海語など)

粤語(広東語)

贛語(江西省・南昌語など)

閩語(福建語・台湾語)

湘語(湖南省・長沙語など)

客家語

 

7番目の客家語は、南方に住む客家の人たちが話す言葉です。「客家」とは、古くは宋王朝の時代に、戦火を逃れて北方から南方へ移住した人たちのことです。客家の人たちは、今でも自分たちの古い文化を大切に保存しており、客家語もその一つです。
この分類を見て分かるように、割合が最も大きいのが北方語で、標準語もこの北方語がベースとなっています。

では、実際に方言の差はどのくらい大きいのでしょうか?話し言葉(口語)に限って言えば、北京人には、広東語も上海語もほとんど理解できません。また、広東人と上海人もそれぞれの方言を話す場合は、お互いにほとんど理解ができません。
そこで、新中国成立後、中国の政府は標準語を普及させました。それによって、各地方の言葉の壁を取り除き、コミュニケーションが円滑に取れるようにしたのです。
中国の小学校、中学、高校では、授業はもとより学内ではすべて標準語を話すよう指導されます。成長した後に標準語が正しく話せないと、社会に出てから非常に困るわけですね。

 

2.中国語の方言とヒアリング

このように方言の差が極めて大きい中国語ですが、では、外国人が中国語を習得する場合に、最も難しい点は何でしょうか?
それは、ヒアリングです。ヒアリングの難しさは、大きな方言の差が原因となっています。つまり、地方出身者は標準語を話せますが、南方出身者は訛りがひどいのです。例えば、広東人や福建人、湖南人など、標準語の訛りが特にきつい人が多いようです。
外国人が学校や教室で学ぶ中国語はすべてきれいな標準語であり、教師も正確な発音を教えます。しかし、実際の中国社会の中で生身の中国人と交流する場合は、訛った中国語を耳にする機会が非常に多いでしょう。南方に行けばなおさらです。
したがって、中国語の実践において、中国語の訛りをいかに正確に聞き取れるかが、ある意味で勝負になると言っても過言ではないでしょう。
また、中国語は日本語に比べ表現が簡潔で、その分音声情報が少ないので、聞き取りはより難しくなります。発音は同じでも、声調の違いで単語の意味が全く変わることもよく有ります。

 

3.ヒアリングの上達のためには

では、実戦的なヒアリングをマスターするコツは何でしょうか?それは、やはりより多くの中国人と交流し、特に訛りのつよい南方の人たちと話をすることで、徐々に耳を慣らしていくことです。
テレビやラジオを聞くことももちろん有益ですが、こうしたメディアで話されるのは多くが正しい標準語なので、そればかりに慣れてしまうと、南方の訛りが聞き取れない場合も有ります。
しかし、ヒアリング(聞き取る力)の底上げを図ることで実戦的な力も養われるので、テレビやラジオもどんどん活用しましょう。
聞くことは、話すことと違って自分一人でも勉強ができるので、中国語を聞く時間を増やしてヒアリングの向上を図ってはいかがでしょうか。