外国語を習得する場合に、対象となる言語の特長を把握することが非常に重要です。
習得する外国語の特長をよく理解することで、学習上のヒントを見つけることができます。
ここでは、中国語の特長をいくつか見ていきましょう。
中国語は16億人が使用している言語で、使用人口から見ると世界最大です。
これは、中国人の人口が世界最大だからで、国際語の英語とは事情が異なります。
英語は世界中の国で通じますが、中国語は基本的に中国人にしか通じません。
中国語の使われている地域は、まず中国、台湾、香港・マカオ、そして海外華僑の居住地域となります。
中国語では一般に、
zhōng wén hàn yǔ
中 文 / 汉 语
と呼ばれています。
「中文」は最も一般的な呼び方で、「汉语」とは漢民族の話す言語という意味で、学術上の呼称、または少数民族の言語(ウィグル語など)と比較する場合に使われます。
また、台湾では「国語」と呼ばれます。
中国語の発音を表すには「ピンイン」と呼ばれる、アルファベットと声調記号を組み合わせた記号が使われます。
これは、中華人民共和国になってから政府によって制定された新しい発音記号です。
台湾では、中華民国からの「注音字母」を受け継いで使用しています。
言語学から見ると、中国語は「シナ・チベット語」に属し、ベトナム語やチベット語と近い言語で、日本語の属する「ウラル・アルタイ語」とは別系統です。
したがって、日本語と比べた場合は基本構文などの違いが有ります。
しかし、日本語と中国語は共通の文字である「漢字」を使用するため、近い点も持っています。
それでは、中国語と日本語、英語の3つの言語を比較しつつ、中国語の特長をさらに掘り下げてみましょう。
言語の構造から見た場合、中国語、日本語、英語は、それぞれ、
中国語 → 孤立語
日本語 → 膠着語
英語 → 屈折語
という特長が見られます。
中国語は漢字だけで構成されるため、単語が一切変化しません。
そのため、中国語においては、語順が重要な働きをします。
単語が全く変化しないので「孤立語」と呼ばれます。
中国語の場合は単語が全く変化せず、文中の品詞が特定しにくいことがありますが、その場合は主に文脈から判断できます。
日本語の文法では、「てにをは」などの助詞が重要な役割を務めます。
助詞は主語や目的語の後ろに付くので、「膠着語」と呼ばれます。
日本語の場合は、付いている助詞によって品詞の判断がしやすいので、助詞は一種のマーキング的な役割を果たしています。
英語は、単語の語尾がアスペクトなどによって変化するので、「屈折語」と呼ばれます。
以上のように、中国語の本質は「孤立語」であり、語順が極めて重要です。したがて、語順が狂うと意味が通じなくなる場合が多いのです。
中国語の基本構文は、英語と同じ、主語+動詞+述語です。
wǒ qù xuéxiào
我 去 学 校。 (私は学校へ行きます)
主語 動詞 目的語
しかし、中国語には「介詞」という品詞があり、これを使うと、
wǒ bǎ chuānghu dǎkāi le
我 把 窗 户 打 开 了。 (私は窓を開けた)
主語 介詞 目的語 動詞 助詞
となり、日本語と同じ構文となります。
中国語の介詞は日本語の助詞に近い働きをします。
さらに発音の点から見ると、中国語は日本語に無く英語に近い音が有ります。
それは、「r」と「l」の区別です。
さらに、「そり舌音」と呼ばれる、下を丸めて発音する音も日本語に有りません。
発音から見ると、日本人にとって中国語の発音は習得が難しいと思います。
逆に、一部の発音が英語に近いため、中国人の英語の発音は日本人よりも正確だと言われることも有ります。
また、中国語の習得で最も難しい点はヒアリングです。
日本語と比べた場合、ヒアリングとスピーキングはちょうど関係が逆になります。
中国語はヒアリングが難しく、逆にスピーキングについては、決まり文句が多く、比較的習得しやすいです。
中国語の場合は、誰と話す時でも表現方法はあまり変わりません。
極端に言えば、友達と話す時と学校の先生と話す時では、言い方がほとんど同じです。
敬語表現も有りますが、非常に少ないようです。
逆に日本語は敬語が発達し、話す相手によって表現を変える必要があることから、外国人にとってはスピーキングの方が難しいと思います。
異なる言語との比較から、中国語の特長を見てみました。
上記の内容をまとめると、中国語の特長としては、
①世界最大の使用人口を有するが、中国人にしか通じない
②日本語とは系統が異なるが、共通の文字を使用するため近い点も有る。
③中国語は単語が全く変化しない「孤立語」
④中国語はスピーキングよりヒアリングが難しい
⑤発音は英語に近く、日本人には習得しにくい
などの点が有りました。
これらの特長を踏まえて、中国語の学習方法について考えてみてください。